魏では執政であった司馬師が急死。弟の司馬昭が跡を継いで大将軍となる。政権安定のため、司馬昭は不満分子を吸収しようと試みるが…。
羊祜と蔡文姫~恵まれた前半生
のちに車騎将軍となる羊祜は、泰山郡の名族として生まれた。
幼いころ、羊祜は乳母におかしなことを頼んだ。

僕、お隣さんの子供の生まれ変わりなんだ。
金の輪があるはずだから、もらってきてよ
乳母が隣の家の木立を確認すると、確かに金の輪があった。
それを聞いた人々は不思議なこともあるものだと噂しあったが…。

金の輪が木立にあったこと、隣の子が早死にしたこと、もともと知っていたのでしょう?

さすが、伯母上はだませないや

あなたは家柄もよく、器量もいい。その上、賢いとなると十分な教育が必要ですね
その後、父親がなくなると、伯母である蔡文姫に厳しく育てられた。
蔡文姫は、かの董卓に物申した蔡邕を父に持つ才媛であり、匈奴の首長に連れ去られて12年匈奴と暮らした苦労人でもある。
そんな蔡文姫に育てられた羊祜は、立派な若者に成長した。

あなたは孔子の弟子顔回のようです。このまま精進すれば、蜀の諸葛亮殿のようになれるでしょう

はい、たゆまず努力します!

キャー! 何あの子、めっちゃイケメンなんですけど!
評判が高まり、夏侯覇(亡命前)の娘を嫁にもらうことになる。
噂はさらに広まり、時の大将軍曹爽からもリクルートがやってきた。

HEY、ストレイシープ!
俺んとこにこないか?

人に仕えるのとか苦手なんで
その後、曹爽が誅殺されると、連座で官をクビになった王沈がやってきた。

すげーな、羊祜は。人を見る目があったよ!

たまたまだよ、たまたま
賈充と郭槐~挫折と苦渋の前半生
のちに太宰になる賈充は、曹操から太守の鑑といわれた賈逵の子供として生まれた。
しかし、幼くして父と死別する。

HEY! 少年よ、俺のもとで大志をいだかないか?
君の仲間もいっぱいいるぜ!!

あんまり気が進まないけど…
曹爽の下で官途についた矢先、高平陵の変が起き、賈充はクビになってしまう。

曹爽一派はクズ揃いだったが、君は見所がある。
私の娘をもらって、もう一度、職に就き給え

もう少しほとぼりを冷ましたいけれども…
気を取り直し、美人で評判の李豊の娘李婉を嫁にもらって再就職。
二人の子供もでき、今度こそ順風かと思われたが、今度は李豊が誅殺されてしまう。

離婚しないと李豊の仲間とみなす

え、マジですか…!

安心しろ、次の嫁は準備してある
結局、賈充は李婉と離婚し、司馬家と親交の深い郭淮の姪である郭槐を妻に娶る。

あんた~! また侍女と浮気したでしょ!

いや、マジでしてないって! 誤解だよ!!
しかし、郭槐はひどく嫉妬深い性格で、それが原因で息子二人を死なせるなど、賈充を困らせた。
一方、賈充と同じように、反乱した夏侯覇の娘を嫁にしていた羊祜だったが…。

父上が蜀に亡命したけど、私はこのままでいいのかしら?

大丈夫、姉上に頼んだから!
それより夏侯覇さんが心配だね

なんて優しい子!!
迷惑かけたのに心配してくれて!
羊祜の姉羊徽瑜が、司馬師に嫁いでいたため、お咎めはなかった。

まあ、羊祜は裏切らんだろう

いや、そんなのずるいって!!
司馬昭と賈充の勧誘活動
正元2年(255)毌丘倹の乱で司馬師が亡くなった後、弟の司馬昭が大将軍に就任。賈充も大将軍司馬として、その幕僚になった。

兄さんは敵を作りすぎた。
僕は、人徳と信義をもって仲間を増やしたい

よいお考えかと思います
司馬昭は広範囲に人材を集め、元の曹爽派や竹林の七賢といった反司馬家と目されていた人々も仲間に勧誘しはじめた。

羊祜、君も義理の兄弟だ。仲間になろう!!

うーん、さすがにもう断れないか
公車(皇帝が召し出す車)を使って呼出しがあったため、やむをえず羊祜も中書侍郎として仕官した。
この頃、司馬昭の妹婿であった杜預や、羊祜の友人の王沈、旧曹爽派の裴秀、荀勗といった人材が司馬昭の側近となっている。

あとは寿春にいる諸葛誕も勧誘したいけど…

諸葛誕とは旧知の仲です。お任せください

諸葛誕は淮南の軍を持ってるから、慎重にね
寿春で征東大将軍として駐屯する諸葛誕は、元々は曹爽派であったが、司馬昭の弟司馬伷に娘を嫁がせるなどして、家族ぐるみの付き合いがあった。

諸葛誕殿、司馬昭様はあなたを司空にすると仰せだ

私が司空? それは出世しすぎだ、何かの間違いだろ?

もちろん曹家と司馬家が争ったら、司馬家に付いてくれると言ってほしい

おいおい、君は賈逵の子だろう? あれほど曹家に引き立ててもらったのに、なぜ司馬家に肩入れするんだ?
結局、賈充は説得できず、洛陽に戻った。

諸葛誕は私兵を集め、反乱を企ててします。
早めに対処すべきかと…

え、マジで! 何が不満なの?
司馬昭は慌てて、諸葛誕を司空にして洛陽に呼び出したが…。

洛陽に帰れば殺される…。
さて、どうしたものか
かくして追い詰められた諸葛誕は反乱を決意するのだった。

もう少しうまくやれば、諸葛誕は反乱しなかったんじゃないかな?

どのみち敵になる男だ。
芽は小さいうちに摘むに限る

やっぱり人生、挫折が多すぎると性格が歪むよね

うるさい! お前みたいなのに言われたくないわ!!
つづく。
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